ショッパイ西瓜 [想い出話]
ちょっと前からスーパーの店頭に並びはじめた
夏を代表する果物「スイカ」
（本当はどちらかと言えば野菜側に分類されるらしい）。
僕は西瓜が嫌いです。
理由は2つある。
1つ目の理由は、食べるのが面倒くさいから。
かぶりつくと、口の周りや手がベトベトになる。
かと言ってスプーンを使うのはまっぴらだ。
種を出す仕草も何となく不格好だ。
（西瓜好きの方々御免なさい）
2つ目は・・・
2つ目の理由は、高校時代に遡る。3人兄姉の末っ子の僕は、何をやってもパッとしない、
目立たない存在だった。
上の2人は頭も良く、スポーツもソツ無くこなすもんで、いつも比べられては
肩身のせまい思いをしていた。
そんな僕の高校時代唯一誇れる？ものと言えば、
部活で部長を務めたことぐらいだろうか。
僕は軟式庭球部（今のソフトテニス）に所属し、
ズバ抜けて上手いわけけでもなし、人望があったわけでもないのに、
部員数は少ないながらも、なぜか主将を任されていた。（なんでだろ〜ね〜）
そんな高2の夏休みのこと。
明日から夏合宿を控えた晩飯の時に親父がオカンに言った。
「明日から合宿なら、西瓜でも差し入れに持って行ってやれぃ」
（広島弁です）
親父の発する言葉に戸惑った。訳が解らなかったからだ。
何故、僕の世界に親父が足を踏み入れるのか？
部活動は僕のテリトリーで、親父には全く関係ない世界だ。
なんだか腹が立ったのを覚えている。
その年頃の子供が皆そうであるように、僕は親父が大嫌いだった。
親父の言動1つ1つに反感をおぼえていた。
「そんなん、して要らん」
僕は親父の言葉をつっぱねた。
「そんな訳にはいかん。主将を務めるもんの親として、そんぐらいせんと
恰好がつかん」
「？？？？」
ますます訳が解らなかった。
恰好つけるなら他でやってくれ・・・だ。
ましてや西瓜なんて・・・
「とにかく要らんけぇ」
僕は席を立ち、話はそこで終わった。
次の日からの合宿といったらものすごいしごき様で、
朝から夜、球が見えなくなるまで、コートの端から端まで・・・
と言うのは嘘で、顧問の教師はかなりユルい人で、
カリキュラムは全て部員任せ。楽しく合宿を過ごしていた。
さすがに夜の校庭で花火を打ち上げた時は少しボヤいていたが・・・・
そんな状態にも関わらず、
そこそこの（？）成績を残せていたのは、現在に至っては不思議でならない。
合宿最終日を明日に控えた日の夕方。
日焼けで真っ黒になった肌を誇らしげに、コート整備をしていた僕を
後輩が呼んだ。
「先輩！お母さんが来とってですよ」
あぁ嫌な予感。
呼ばれた場所に行くと、
案の定両手に1個ずつの西瓜を持った母親が立っていた。
「何で来たん？要らん言うたじゃろ？」
「そんでも、やっぱり持って来て上げよう思うて」
「そんなんされても嬉しゅうないけぇ！」
「なんでそんなん言うんねぇ？とにかく置いて帰るけぇね」
少しの押し問答の後、結局オカンは西瓜を置いて帰った。
なんだか悔しかった。
大嫌いな父親の手下みたいなオカンに腹が立ったし、
子供だけの社会に、親に首を突っ込まれるのも恥ずかしかった。
ここは自分の世界で、親は関係ない。
その日の夜、恥ずかしさもあって、僕は皆に西瓜を振る舞わなかった。
次の日は合宿最終日。午前中で練習はおしまい。
練習を終えた後、差し入れのことを顧問に話し、
皆に西瓜を配った。さすがに捨ててしまう訳にはいかない。
西瓜は冷えてなくて、おいしくなかった。
ましてや物の溢れる時代。西瓜を「ウマい。ウマい。」と
喜ぶ者などいない。
結局、西瓜は余ってしまった。
自分では、「いらん」と言ったくせに、余ってしまうとなんだか悲しかった。
余った西瓜と、食べ終わったカスを見ながら、なんだか遣る瀬ない気持ちになり、
「もう、西瓜なんか2度と食うか・・・！」
その年の部活での成績は、県大会2回戦敗退という、中途半端な成績で終わり、
その後それ以上の成績を残す事はなかった。（西瓜の祟りでは？）
あの夏の出来事以来、僕はほとんど西瓜を口にしていない。
進められても、嫌いだからと頑なに断ってきた。
本当は心底嫌いなわけでは無い。
でも、西瓜を見る度に、校舎の脇に西瓜を持って立っていた、
瘠せたオカンの姿や、余ってしまった西瓜の事、素直に受け取れなかった
子供だった当時の自分を思い出して、なんだか遣る瀬なくなるのだ。
今に至っては、親の気持ちも少しは理解できる。
親としては、何の取り柄も無かった末っ子が頑張っているのが、
嬉しくて仕様がなくて、応援したかったのだろう。
そんな風に解釈ができるようになった。
そして今だったら、
素直にオカンに「ありがとう！」て言って、
「おーい！うちの親が西瓜差し入れに持ってきてくれたでぇー！
みんな食ってやー。どうな？うまいか？不味くても全部食えよ！
残したら許さんど（笑）！」
くらいの事は言えるのに。
当時の僕が、もう少し大人だったら、
こんなに西瓜から遠ざかる事もなかったのに・・・
などと思う今日このごろです。
axl-さん、nice!どーもです。
長文ですみません。
by lucy (2008-06-01 00:01)